神戸地方裁判所 平成8年(ワ)884号 判決 1998年6月16日
原告
武本英生外三名
右原告四名訴訟代理人弁護士
小沢秀造
同
鉄井達彦
同
松本隆行
被告
株式会社アイネシステム
右代表者代表取締役
小山立雄
右訴訟代理人弁護士
飯島歩
同
森本宏
同
八代紀彦
同
佐伯照道
同
天野勝介
同
中島健仁
同
山本健司
同
滝口広子
同
渡辺徹
同
児玉実史
同
生沼寿彦
同
中森亘
同
小瀧あや
同
奥田孝雄
主文
一 被告は、原告武本英生に対し金二七七七万五〇〇〇円、原告武本美千子に対し金二七七七万五〇〇〇円、原告山田敏雄に対し金二二八一万円、原告山田美智子に対し金二二八一万円の各金員及びそれら各金員に対する平成七年一月一七日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告らのその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用はこれを三分しその二を被告の負担とし、その余を原告らの負担とする。
四 この判決は主文一項に限り仮に執行することができる。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
1 被告は、原告武本英生に対し金四一六六万三六三六万、原告武本美千子に対し金四一六六万三六三六円、原告山田敏雄に対し金三九五一万〇〇三一円、原告山田美智子に対し金三九五一万〇〇三一円の各金員及びそれら各金員に対する平成七年一月一七日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 右1につき仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 事故の発生等
(一) 被告は、ホテル経営などを業とする株式会社であり、昭和六一年一二月一六日、左記のホテル用建物(以下「本件建物」という。)を購入してその所有権を取得し、本件建物においてホテルを経営していた。
記
神戸市兵庫区七宮町<番地略>
鉄筋コンクリート及び鉄骨造陸屋根地下一階付七階建旅館
(二) 武本晋一(以下「晋一」という。)及び山田愛(以下「愛」という。)は、平成七年一月一六日から一七日にかけて本件建物四階四〇六号室(以下「本件客室」という。)に宿泊していたところ、平成七年一月一七日未明に発生した兵庫県南部地震により、本件客室を含む本件建物の一部が崩落したため、崩落部分の下敷きとなって死亡した(以下「本件事故」という。)。
(三) 原告武本英生及び原告武本美千子は晋一の父母であり、原告山田敏雄及び原告山田美智子は愛の父母である。
2 本件建物の瑕疵
(一) 本件建物は、昭和三九年六月二二日に新築された当時は、概ね別紙略図①のとおりの鉄筋コンクリート造陸屋根六階建の建物であり(以下、この当初建築部分を「東棟」という。)、東棟の一、二階西端の別紙略図朱線表示の部分の上方には幅二メートルの範囲で建物がない空間(以下「被災空間」という。)があり、昭和三九年一〇月三〇日、東棟の南西角に概ね別紙略図②の斜線部分のとおり鉄骨造四階建の増築が施されたが(以下、その増築部分を「南棟」という。)、被災空間はそのまま空間として維持されていた。
本件建物には、昭和四四年一一月二三日、概ね別紙略図③のとおり、東棟及び南棟の西側に接して、鉄筋コンクリート造陸屋根七階建(地下一階付)の部分を加えるという大規模な増築が施され(以下、その増築部分を「西棟」という。なお、その増築の際には南棟にも五階部分が増床されている。)、その際、被災空間にも三階ないし六階が増築された(以下、西棟のうち被災空間に建築された建物部分を「被災増床」といい、西棟のうちそれ以外の部分を「西棟本体」という。)。
(二) 西棟の増築は、まず、西棟本体を東棟一、二階の西側壁に接するように七階まで立ち上げ、西棟本体と東棟との間の仕切り隙間となった被災空間に被災増床を埋め込むという手法によって行われたが、被災空間に増床を設ける際、東棟との間に間隙を設けて東棟と西棟との接合を避けるという手法がとられず、東棟の西側壁を取り壊したうえ、被災空間にはめ込まれた鉄骨枠を金属製アンカーによって東棟及び西棟本体のコンクリート梁に固定し、その鉄骨枠の上に鋼製デッキプレートと床コンクリートを敷設するという手法がとられた。
そのため、地震が発生した場合には、異なる揺れ方をする西棟と東棟の二棟の建物が被災増床でつなぎ止められるという構造となってしまい、被災増床を支えるアンカーに無理な力が加わり、アンカーが外力に耐え切れなくなるという構造的な危険性が生じることになった。
しかも、右のような構造的な危険性があるにもかかわらず、被災増床を支えるアンカーは、非常に大きな外力に耐えうるようなものとして施工されてはいなかったのである。
(三) 被災増床は、右のように増築された結果通常要求される耐震性を欠くという瑕疵を有していたため、兵庫県南部地震の際、概ね別紙略図④のように、被災増床の六階天井、五階天井(六階床)、四階天井(五階床)が崩落し、それらが本件客室に落下し、晋一及び愛がその下敷きとなって即死するに至ったものである。
(四) したがって、被告は、瑕疵ある工作物(本件建物)の所有者として、民法七一七条により、本件事故によって生じた後記3の損害を賠償する責任を負う。
3 損害
(一) 晋一の過失利益
晋一は、本件事故当時二四才の男性であり、本件事故に遭わなければ、就労可能な六七才までの四三年間稼働し、その間毎年、統計上の男性の平均賃金である三二九万七五〇〇円の収入を得ることができたのに、これを失ったものであり、その間の晋一の生活費(収入の四割)を控除し、新ホフマン係数(22.61)を用いて中間利息を控除して、右逸失利益の総額を本件事故当時の金額に換算すれば、四四七三万三八八五円となる。
(二) 晋一の慰謝料
晋一は、本件事故により、若くして死亡したのであるから、その精神的苦痛は図り知れず、これを慰謝するための慰謝料の額としては二四〇〇万円を下ることはない。
(三) 愛の逸失利益
愛は、本件事故当時二一才の女性であり、本件事故に遭わなければ、就労可能な六七才までの四六年間稼働し、その間毎年、統計上の女性の平均賃金である二八八万八〇〇〇円の収入を得ることができたのに、これを失ったものであり、その間の愛の生活費(収入の四割)を控除し、新ホフマン係数(23.53)を用いて中間利息を控除して、右逸失利益の総額を本件事故当時の金額に換算すれば、四〇七七万二七八四円となる。
(四) 愛の慰謝料
愛は、本件事故により、若くして死亡したのであるから、その精神的苦痛は図り知れず、これを慰謝するための慰謝料の額としては二四〇〇万円を下ることはない。
(五) 遺族固有の慰謝料
原告らは、いずれも、将来のある若い子供を失って甚大な精神的苦痛を受けたところ、これを慰謝するための慰謝料の額としては各自三〇〇万円を下ることはない。
(六) 葬儀費用
原告らは、晋一又は愛の葬儀を行い、各自六〇万円を負担した。
(七) 弁護士費用
原告らは、本訴の提起及び追行を原告ら訴訟代理人に有償で委任せざるをえず、原告武本英生及び原告武本美千子において各三七九万六六九四円の、原告山田敏雄及び原告山田美智子において各三五九万八六三九円の弁護士費用の支出を余儀なくされた。
(八) 既払額
被告は、香典として、原告武本英生及び原告武本美千子に対し二〇万円を、原告山田敏雄及び原告山田美智子に対し一五万円を支払った。
4 よって、原告らは、民法七一七条に基づき、原告武本英生及び原告武本美千子においては右3(一)及び(二)の相続分各二分の一並びに右3(五)ないし(七)の合計額から右3(八)の既払額(各一〇万円)を控除した各四一六六万三六三六円の、原告山田敏雄及び原告山田美智子においては右3(三)及び(四)の相続分各二分の一並びに右3(五)ないし(七)の合計額から3(八)の既払額(各七万五〇〇〇円)を控除した各三九五一万〇〇三一円の損害賠償金の支払を求めるとともに、それらに対する本件事故当日から完済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1の事実は認める。
2(一) 同2(一)の増築の経緯については、被告が本件建物を購入する以前に行われたものであって、知らない。
(二) 同2(二)は否認する。本件建物の増築は、長期荷重や短期荷重について増築当時の仕様基準を充たしていたものであって、増築後長年が経過しても増床部分にはたわみや変形が生じていなかったものであり、被災増床に構造的な危険性があったとはいい難く、本件建物の設置及び保存の瑕疵は存在しない。
(三) 同2(三)は否認する。
本件建物付近における地震の揺れは、東西動より南北動が卓越して大きく、西棟と東棟が異なる揺れ方をしたとは考えにくく、したがって、被災増床のアンカーに無理な外力が加わり、原告ら主張の構造的危険性が顕在化した結果本件事故が発生したという因果関係は認められない。
本件事故は、被災増床のアンカーやコンクリートが、未曾有の大地震という不可抗力(南北動八一八ガルという卓越した地震動)によってせん断された結果生じたものである。
3(一) 同3(一)及び(三)は争う。晋一は、本件事故当時、知人と新規事業を行う準備のため無収入の状態であったし、本件事故の五か月前まで勤務していた会社から支給されていた給与額も八か月も一六二万五〇〇〇円にすぎないし、愛の本件事故当時における年収も一一二万円であり、晋一や愛が、将来にわたって、原告ら主張の平均賃金に相当する収入を得られたであろう蓋然性は非常に乏しいといわざるをえない。
また、単身者であった晋一及び愛の生活費の控除割合も四割というのは少なすぎるものである。
(二) 同3(二)、(四)、(五)、(六)及び(七)については、その損害額を争う。
(三) 同3(八)の事実は認める。
4 同4は争う。
第三 証拠
本件記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるからこれを引用する。
理由
一 請求原因1の事実は当事者間に争いがない。
二 甲第八ないし第一〇号証、第一一号証の一ないし四、第一二号証の一、二、第一三号証の一ないし五、検甲第一号証の一ないし九、乙一号証の一ないし三、第三号証、第四号証及び原告武本英生本人尋問の結果によれば、以下の事実が認められる。
1 本件建物は、昭和三九年六月二二日に新築され、請求原因2(一)記載のとおり、鉄筋コンクリート造六階建の東棟に、鉄骨造四階建の南棟及び鉄筋コンクリート造七階建の西棟が順次増築された建物であり、地下一階があるのは西棟だけである。
2 昭和四四年に行われた西棟の増築は、まず、東棟一、二階及び南棟一階ないし四階の西側壁に接するように、西棟本体の鉄筋コンクリートの柱及び梁を七階まで立ち上げ、その次に、西棟本体と東棟との隙間となった被災空間(2メートル×7.635メートル)に被災増床を増築するという手法によって行われた。
3 被災増床は、それ独自の柱(東棟二階屋上から立ち上げられた柱)で支持されていたわけではなく、鋼製アンカー(棒状の鋼)で左右の西棟本体及び東棟の鉄筋コンクリート梁に固定された鉄骨枠によって支持されており、したがって、被災増床は、東棟との間に適度の間隙を設けて増築されたわけではなく、東棟と完全に接合するように増築されたものである。そして、右鉄骨枠の上には、鋼製デッキプレートと床コンクリートが敷設され、東棟の東側壁が取り払われて、被災増床と東棟の一部とをもって一つの客室が構成されることになった。
西棟増築の結果、本件建物のうち、三〇六号室(三階)、四〇六号室(四階の本件客室)、五〇六号室(五階)、五〇七号室(六階)は、いずれも、客室のうち概ね東側から三分の一が被災増床であり、その余が当初新築時から存する東棟の床という継ぎ足した構造になった。
4 右のような増築の結果、本件建物の東棟、南棟及び西棟本体の三つの棟は、基礎や地下部分の構造・建築時期を異にし、地上部分を支持する柱・梁といった基礎的構造体も別々に有するものとなっていた。
建物は、強固に一体化された基礎・柱・梁によって建物の自重を鉛直下方向に伝えることによって地盤に安定して存立するとともに、建物に加わった外力を分散して地盤に伝えることによって倒壊を免れるという構造を有すべきものであるから、基礎・柱・梁が別々に構築された東棟・南棟・西棟本体は、それぞれが、いわば別個の建物というに等しいものとなっており、地震があった場合には、それぞれが、独自の基礎・柱・梁によって地震動に対応し、異なる揺れ方をすることになる。
5 したがって、被災空間に増築を施す場合には、異なる揺れ方をする左右の東棟及び西棟本体の両方と接合するのではなく、片方とのみ固定し、片方の棟との間には適当な間隙を設ける(いわゆるエキスパンション・ジョイント)という方法によって増築が行われるべきであった(その場合には、被災空間の間隙側にも独自の柱が必要となると考えられる。)。そうでなければ、異なる揺れ方をする東棟及び西棟本体とが、被災増床によってつなぎ止められるという構造になってしまうから、被災増床が、東棟の梁と西棟本体の梁を強固につないで一体の梁とするような極めて堅牢な構造になっていない限り、被災増床が東棟及び西棟本体と接合する部分に地震による外力が極端に集中することになってしまい、その接合部が破壊される危険が高いからである。
6 ところが、被災増床は東棟と西棟本体とに接合されていた結果、兵庫県南部地震の際の揺れにより、接合部の鋼製アンカーが破壊され、被災増床のうち六階、五階、四階の天井が真下に抜け落ち、本件客室に宿泊していた晋一及び愛を直撃し、その崩落の衝撃で両名を即死させたものである。
7 本件建物の被災増床以外の部分(東棟、南棟、西棟本体)は、地震による構造体等のひび割れなどの被害があったとはいえ、壁や天井の大きな規模の崩落や倒壊が生じた部分はなく、地震後も存立していた。また、本件建物の付近の兵庫県南部地震による震度は「6」であり、本件建物近隣の古い木造の家屋も多数が倒壊を免れている。
三 以上の事実が認められるところ、これによれば、被災増床は、その増築手法の結果、地震の際にその接合部が破壊され易いという構造的な危険性を有することになっていたものであり、本件建物は、被災増床において、地震に耐えて崩落・倒壊を免れ、もって建物内を安全な移住空間として保つという通常要求される強度を保持していないことが明らかであり、その設置に瑕疵があるといわざるをえない。そして、本件事故がその瑕疵によって招来されたことは、被災増床のみが崩落したという本件事故の状況に照らして明らかであるから、被告は、民法七一七条により、後記四の損害を賠償する責任を負う。
なお、被告は、本件事故が不可抗力によるものであると主張するが、その提出に係る乙第五、第六号証によっても、被災増床以外の本件建物や近隣の古い木造家屋が倒壊していないという状況を踏まえて、なお、本件事故が不可抗力によって発生したことを裏付ける事実関係を認めることはできない。
四 原告武本英生及び原告武本美千子は、晋一の父母として次の1及び2に係る損害賠償債権を各二分の一ずつ相続し、次の5ないし7に係る固有の損害賠償債権を取得したものであり(損害賠償債権の額は各二七八七万五〇〇〇円となる。)、原告山田敏雄及び原告山田美智子は、愛の父母として次の3及び4に係る損害賠償債権を各二分の一ずつ相続し、次の5ないし7に係る固有の損害賠償債権を取得したものである(損害賠償債権の額は各二二八八万五〇〇〇円となる。)。
1 晋一の逸失利益
(一) 甲第一号証、甲第一五号証、甲第一七ないし第二〇号証、第二二号証、原告武本英生本人尋問の結果によれば、(1) 晋一は、昭和四五年四月五日生まれの男性であり、高校卒業後就職したこと、(2) 晋一は、平成四年一月以降、ジェットスキーやモーターボートという小型船舶の修理等を行う株式会社トップノットマリンに勤務しており、平成六年一月から八月までの給与として晋一に支給された金額は一六二万五〇〇〇円(一二か月に換算すれば二四三万七五〇〇円)であったこと、(3) 晋一は、知人と共同で同様の業務を開業する準備に当たるため、平成六年八月二五日、右会社を退職し、本件事故当時は無収入の状態であったことが認められる。
(二) 右認定によれば、晋一は、本件事故当時二四才の男性であり、無収入の状態にはあったが就労を予定しており、本件事故に遭わなければ、就労可能と考えられる六七才までの四三年間稼働することができ、その間毎年、少なくとも二四三万七五〇〇円の年収を得ることができたのに、これを失ったものと推認すべきであるから、その間の晋一の生活費(収入の五割)を控除し、新ホフマン係数(22.611)を用いて中間利息を控除して、右逸失利益の総額を本件事故当時の金額に換算すれば、二七五五万円(一万円未満の端数を切捨て)となる。
2 晋一の慰謝料
晋一は、本件事故により、悲惨な最期を遂げ若くして死亡したのであって、その苦痛は図り知れないものと考えられるところ、その苦痛を慰謝するための慰謝料の額としては一七〇〇万円が相当である。
3 愛の逸失利益
(一) 甲第二号証、第一六号証、第二一号証及び原告山田美智子本人尋問の結果によれば、愛は、昭和四九年一月一六日生まれの女性であり、平成六年三月に夙川女子短期大学を卒業し、晋一と同じ株式会社トップノットマリンに入社して稼働していたものであり、平成六年四月から一二月までの給与として愛に支給されていた金額は一一二万円(一二か月に換算すれば一四九万円三三三三円)であったことが認められる。
(二) 右認定によれば、愛は、本件事故当時二一才の女性であり、本件事故に遭わなければ、就労可能と考えられる六七才までの四六年間稼働することができ、その間毎年、少なくとも一四九万三三三三円の年収を得ることができたのに、これを失ったものであり、その間の愛の生活費(収入の五割)を控除し、新ホフマン係数(23.534)を用いて中間利息を控除して、右逸失利益の総額を本件事故当時の金額に換算すれば、一七五七万円(一万円未満の端数を切捨て)となる。
4 愛の慰謝料
晋一と同様に、愛が本件事故で死亡したことによって受けた苦痛を慰謝するための慰謝料の額としては一七〇〇万円が相当である。
5 遺族固有の慰謝料
原告らは、いずれも、本件事故で将来ある若い子供を失って甚大な精神的苦痛を受けたことが明らかであり、これを慰謝するための慰謝料の額としては各自三〇〇万円が相当である。
6 葬儀費用
原告武本英生及び原告山田美智子本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告武本英生及び原告武本美千子が晋一の葬儀を、原告山田敏雄及び原告山田美智子が愛の葬儀をとり行ったことが認められ、本件事故と相当因果関係に立つ葬儀費用(墓石建立費その他葬儀関係の諸費用を含む。)の額としては晋一及び愛について各一二〇万円(原告らについて各六〇万円)であると認められる。
7 弁護士費用
弁論の全趣旨によれば、原告らは、本件事故による損害について任意の賠償を受けることができず、本訴の提起及び追行を原告ら訴訟代理人に有償で委任せざるをえなかったことが認められるところ、本件訴訟の難易度等を考慮すれば、本件事故と相当因果関係に立つ弁護士費用の額としては、原告らについて各二〇〇万円と認められる。
五 請求原因3(八)の事実は当事者間に争いがないから、原告武本英生及び原告武本美千子の各損害賠償債権は、一部弁済額各一〇万円を控除した二七七七万五〇〇〇円となり、原告山田敏雄及び原告山田美智子の各損害賠償債権は、一部弁済額各七万五〇〇〇円を控除した二二八一万円となる。
六 以上の次第で、本件請求は主文一、二項の限度で理由があるからこれを認容することとし、その余を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六一条、六四条、六五条を、仮執行宣言につき二五九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官橋詰均)
別紙略図①〜④<省略>